2012年5月1日火曜日

東北大学病院/Tohoku University Hospital:消化器内科


 私達の診療科は、消化器の専門科です。消化器というのは、食べ物の消化と吸収に関連する全ての臓器を言います。食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、膵臓、胆嚢などが含まれ、内臓のなかでは最大のものと言えます。消化器は体外と通じており、外界と体内との境界面を作る臓器です。また、身体の外から異物である食物を毎日取り入れ、細菌やウイルスにも直接曝されますから、多くのさまざまな病気が発生します。私達が扱うおもな病気をざっとあげてみましょう。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、逆流性食道炎、食道静脈瘤、食道癌、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝癌、急性膵炎、 慢性膵炎、膵癌、胆石症、胆嚢炎、胆嚢および胆道癌、腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、大腸ポリープ、大腸癌などなど。特に注意したいのは、 日本では癌の罹患率が今後急速に増加しますが、全悪性腫瘍のトップ10の中に消化器の癌は7つも入るということです。
 私達は消化器の専門家として、患者さんの症状をていねいに聞き、専門家としての知識と経験からいくつかの病気を頭に描きながら検査を行って診断を決め、最も有効でそれぞれの患者さんに適した治療法を選びます。私達が行う代表的な検査としては、食道や胃、大腸、小腸などの内臓の内面を観察して、小さな病変も見のがさない内視鏡検査や、お腹の中の病変を超音波やX線などで捉える、腹部超音波検査やX線CT検査、MRIやPET検査などがあります。最近の検査装置や検査技術の発達はすばらしく、胃内の5mm程度の早期癌も見のがしませんし、肝臓の1cm程度の小さな癌も捉えることができます。
 私達は、患者さんに優しい医療を目指して診療を行っています。私達は毎日さまざまな物を食べ、お酒を飲んで消化器を酷使しますが、身体の活動や成長、栄養状態を維持するために、消化器は食物の消化と吸収を確実に行ってくれる大切な臓器です。腹が痛い、胃の調子がよくない、食欲がない、体重が減ってきた、腹がはる、胸焼けがする、便が出にくい、下痢がしやすいなどの症状がある時、私達の診療科を受診し御相談ください。また、検診で貧血や肝機能異常がみつかったり、便の潜血反応が陽性であったような場合、消化器に何か不安があるような場合は私達の消化器科を気軽に御利用ください。

消化器内科は上部消化管、下部消化管、肝臓、膵臓、胆嚢・胆道系の疾患を主に取り扱っています。

上部消化管疾患

胃癌


口臭の感染

胃癌は日本人に多い癌で、現在日本の総患者数の中で悪性新生物としては最も多くなっています。胃癌検診や内視鏡の技術革新によって早期発見・早期治療が確立し、死亡者数は減少傾向にあるものの、依然として日本人のがん死亡者数の中では上位に位置しています。当科においては、内視鏡による胃癌の早期発見と 早期胃癌(粘膜内癌)の内視鏡治療をおこなっています。

食道癌

食道癌(扁平上皮癌)の発生には飲酒・喫煙などの環境要因が大きく影響しています。食道癌発生初期のうちは無症状で、検診や人間ドックなどの際におこなわれる内視鏡検査で初めて偶然に発見されることも多いとされています。当科においては、内視鏡による食道癌の早期発見と内視鏡治療可能な食道癌の治療をおこなっています。

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、さらに胃酸の分泌と粘膜防御機能のバランスが崩れることによって起こる粘膜の傷害です。多くは胃酸分泌抑制薬と防御因子増強薬の薬物療法で治ります。また、ピロリ菌の除菌により再発が減少するとされています。当科においては、内視鏡検査による潰瘍の診断とピロリ菌感染の有無をチェックして必要に応じてピロリ菌の除菌療法をおこないます。

胃食道逆流症

胃酸を含む胃液や十二指腸液が食道へ逆流することによっておこる食道粘膜の炎症で、胸やけ、胸部不快感、ゲップなどの症状があります。特に内視鏡検査の際、実際に粘膜傷害を認めるものを逆流性食道炎といいます。食生活の欧米化やヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染の減少に伴い増加する傾向にあります。また、近年食道に発生する腺癌との関連が報告されています。胃食道逆流症は胃酸分泌抑制薬による薬物療法でコントロールします。

下部消化管疾患

クローン病

下痢、腹痛を主訴とする原因不明の炎症性腸疾患ですが、近年遺伝統計学的、免疫学的にその原因が研究されています。胃・小腸にも炎症、潰瘍が発生します。栄養療法、ステロイド療法など従来の治療のほかにインフリキシマブ(レミケード)を使った抗体治療も行われてきています。

潰瘍性大腸炎


子供の発熱と頭痛

主に下血、腹痛を主訴とする、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性腸疾患です。クローン病とは異なり大腸以外に病気が発生する事が殆ど無く、多くの場合炎症は直腸より連続しています。治療はステロイド療法のほかに白血球/好中球除去療法、免疫抑制剤投与が行われています。

大腸がん・大腸ポリープ

大腸がんは近年多くなってきているがんで、その背景には食生活の欧米化があると推測されています。良性の大腸ポリープが発育して大腸がんとなる事も報告されています。大腸がんは早期発見・早期治療が大変有効ながんで、遠隔転移があっても手術可能な時期なら手術により高い治療効果が望めます。

膵・胆嚢・胆道系疾患

急性膵炎

急性膵炎は、膵臓が作る消化酵素によって膵臓自身が消化(自己消化)される病気です。突発的な激しい腹痛が主な症状で、原因として飲酒、胆石、高脂血症などがあります。このうち重症急性膵炎は致命率が約30%にも達し、難病に指定されています。

慢性膵炎

膵臓の繰り返す炎症のために膵臓の細胞が破壊されて線維化し、膵臓全体が硬く、萎縮していく病気です。膵臓の中に石(膵石)や襄胞が出来ることもあります。原因の1つとして多量の飲酒があります。初めは持続性、または繰り返す腹痛が主な症状ですが、進行すると消化吸収障害や糖尿病を合併します。

膵腫瘍

日本での癌による死亡率で、膵癌は男性で第5位、女性で第6位であり、早期発見・治療の難しい癌といわれています。膵癌発見のきっかけとしては超音波検査が約40%と高く、定期的に検診などで超音波検査を受けることも大切です。治療法は主に手術になりますが、最近新しい抗がん剤などが開発されつつあります。この他膵腫瘍には内分泌細胞から発生する内分泌腫瘍などさまざまなタイプの腫瘍があります。

胆嚢・胆道系疾患

この部位に起こる病気としては胆石症、胆嚢炎・胆管炎などの良性疾患と胆嚢癌・胆管癌などがあります。胆嚢癌・胆管癌では症状が少ないものがあり、早期発見が難しいな場合もありますが、これらの小さな病変の診断には胆嚢・胆道系疾患の診断に超音波内視鏡や管腔内超音波検査法などが用いられます。

肝疾患

ウイルス性肝炎


ミルクの発疹

主にA型、B型、C型、D型、E型があります。日本の肝炎の8割はウイルスが原因といわれています。B型・C型肝炎は慢性化することがあります。B型肝炎の治療にはラミブジン(ゼフィックス)という抗ウイルス薬に加えてアデホビル(ヘプセラ)、エンテカビル(バラクルード)という薬剤も使用されるようになり、治療方法が広がりつつあります。またC型肝炎に対してはウイルス型とウイルス量により、リバビリンという内服薬とペグインターフェロンの注射を組み合わせて有効な治療法を選択していきます。

薬剤性肝障害

薬剤が肝に直接的、間接的に働いて生じる肝細胞障害型と胆汁うっ滞のために起こる胆汁うっ滞型とその両方が起こる混合型の3つに分けられます。治療は起因薬剤の中止ですが、遷延する場合はステロイドや利胆剤を用いることもあります。

自己免疫性肝炎

自己免疫により慢性に経過する肝炎で、適切に治療しなければ早期に肝硬変へと進展します。治療はステロイド投与による肝炎の沈静化と合併症のコントロールです。

原発性胆汁性肝硬変

肝臓内の胆管炎によって慢性の胆汁うっ滞を起こす疾患で、原因として遺伝や免疫の関与が考えられています。肝組織生検による病期分類は4期あり、肝硬変はその第4期にあたります。従って、病名に肝硬変とありますが、必ずしも肝硬変とは限りません。治療には利胆剤を使いますが、進行して生命予後が悪い場合肝移植が行われることがあります。

肝細胞癌

肝細胞癌の約90%はウイルス感染症が原因です。このため慢性肝炎がある場合、定期的に超音波検査やCT検査をして、早期発見することが重要です。治療としては手術のほか、内科治療として肝動脈塞栓療法やエタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法があります。

 その他肝硬変の合併症の静脈瘤や肝嚢胞、Wilson病などの代謝性疾患もあつかっています。また肝移植の術前管理も行っています。

上部消化管疾患

 胃・食道癌や粘膜下腫瘍に対して従来の内視鏡に加え超音波内視鏡も用いて、病気の広さと深さを詳細に診断しています。食道癌や胃癌のうち、内視鏡治療可能なものに対しては、従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)に加え、より広く切除可能な粘膜下層剥離術(ESD)も取り入れて早期治療をおこなっています。胃、食道の病気を粘膜の状態や胃酸分泌の状態の観点から詳細に検討・把握するために、組織検査、pHモニタリング、胃液検査なども積極的におこなっています。


下部消化管疾患

拡大内視鏡、超音波内視鏡を用いた大腸腫瘍の詳細な観察と粘膜切除術による早期治療を行っています。

また、インフリキシマブによるクローン病の治療も行っています。

膵・胆嚢・胆道系疾患

膵炎の原因や病態の解明のために遺伝子解析を行っています。

 重症急性膵炎に対しては膵臓に流入する動脈から高濃度の薬剤を直接的・持続的に投与する動注療法などの新しい治療法を取り入れ、当院肝・胆・膵外科との連携のもと重症例の救命率向上に取り組んでいます。

 慢性膵炎に対して、内視鏡を用いて膵石を取り除く採石術、膵管内にチューブを留置し膵液の流れをよくするステント留置、内視鏡で嚢胞にチューブを挿入する嚢胞ドレナージ術など、各種内視鏡治療を取り入れています。

 胆道腫瘍・膵腫瘍の診断のため、胃・十二指腸から超音波で病変を観察する超音波内視鏡や、胆管・膵管かから超音波で病変を観察する管内超音波検査を導入し、小さな腫瘍や腫瘍の広がりなどを詳細に観察しています。 通常は採取の難しい膵臓の組織を超音波内視鏡で採取する超音波内視鏡下穿刺吸引生検法を用いて膵臓病の適確な診断に取り組んでいます。

肝疾患

膵炎の原因や病態の解明のために遺伝子解析を行っています。

肝疾患の正確な診断のためにエコー下肝生検・腹腔鏡下肝生検、血管造影検査を行っています。

ウイルス性肝炎の治療にインターフェロンとリバビリンの併用療法、新しいペグインターフェロン療法を行っています。

通常の超音波検査では描出の困難な肝細胞癌に対しては造影超音波検査を行い、詳細に観察・治療を行っています。 肝細胞癌の内科的治療として肝動脈塞栓療法、エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法を行っています。



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