2012年4月14日土曜日

第4回 麻酔科医による麻酔科医のためのシステム「ORSYS」 | 施設紹介リレー | 麻酔


使いやすさを追究し、ノンクリック画面を実現

医療機器メーカーと共同開発されている周術期麻酔管理システム「ORSYS(オルシス)」*についてお伺い致します。こちらは画期的な機能が満載のようですが、開発のきっかけはどのようなことだったのでしょうか

もともとは、当院に2008年に導入された電子カルテシステムの一部だったのですが、私共の仕事のこういう部分をもっと改善してほしいということをメーカーに具体的に提案したことがきっかけで今に至ります。

主にどのような点を要請されたのですか

重視したのは、麻酔科医の視点での使いやすさ。いかに麻酔科医の負担を減らすか、をコンセプトにしました。例えば、手術中、画面をクリックしなくてもマウスを当てるだけで様々な情報を表示できるようにしたことは画期的です。クリックを求めてくるシステムが多い中、マウスを動かすだけで、詳しい患者情報を始めとする全ての情報にアクセスできるのです。

ちょっとした工夫で、作業能率が格段と上がりますね。他にも使いやすさを重視した機能はあるのでしょうか

カンファレンス画面と麻薬処方システムです。 カンファレンスの際には、専用モードに切り替えると詳細な患者情報が表示されます。患者さんの名前やID、身長体重などの個人情報から病名、手術担当医、麻酔法、手術予定時間、術後鎮痛、術後の問題点まで全ての情報が一瞬にして、見やすい大きさの文字で表示されるのです。緊急手術の情報も即座に反映されます。ここでも、マウスをあてるだけで表示される技術が採用されています。おかげで朝のカンファレンスで、システムに待たされる時間はなくなりました。


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また、手術室での麻薬処方ができるシステムもオリジナルで付加しました。手術室に薬剤師が常駐している当院の特徴も大きいのですが、薬剤師の管理の下、私たち医師が金庫から必要な麻酔を必要なだけ取り出すことができ、使用した内容をシステムに入力すれば申請・承認が得られるような仕組みになっています。実物と申請内容をスーパーバイザーが照合し、承認されれば、薬剤師に提出する注射箋、施用表の形となって出力することが出来ます。事前の処方箋を手書きで作成する手間がなく、麻酔科内でもとても好評です。

「10秒トレンド」で鋭敏な動きも見逃さず

ORSYSは導入される施設によってカスタマイズされているそうですが、広島大学バージョンでは、どのような点が最も特徴的ですか

ORSYSをいわゆる電子麻酔チャートや単なる記録装置だとお考えの方もいらっしゃいますが、「管理システム」というほどですから、その機能は多岐にわたります。その中でも、特に力を入れて開発したのが「10秒トレンド」といい、繋がっているモニタやシリンジポンプなど全ての機器のデータの数値を10秒ごとに取りこむ機能です。この機能から、患者さんの状態をより正確に把握することができます。

10秒間隔とは、かなり短い時間ではないでしょうか

多くの病院で使用している電子記録では1分間隔の自動取り込みが標準です。通常1ポイントで表示されるところが、6ポイントで表示される、この違いは大きいです。血圧、心拍、心電図、などの変化を見るために、通常は1分待たないとデータが出てきませんが、当院では10秒ごとに把握することが出来ます。通常分単位のところが秒単位で分かるのですから革新的ですよね。特に、心拍数などのバイタルサインの動きは鋭敏なので、10秒トレンドの効果は大きい。10秒でないと拾えないデータは他にも多数あるので、10秒トレンドはとても重宝します。


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患者さんのより細かな状態を把握できるということですね

従来は1分につき1回しかプロットしないので、麻酔薬の投与量等を調節したことによる状態変化をとらえきれないこともあります。ところが10秒に1回だと当然、全ての微妙な変化もとらえることが出来ます。下手な麻酔をすると細かく記録されてしまうというプレッシャーもありますよ。10秒ごとの記録は手直しする暇がなく、そのまま記録されてしまうから、透明性は非常に高いということです。

マネジメントという視点ではORSYSはどのように活躍しているのでしょうか

手術の進行状況を表示させるだけでなく、麻酔科医が今どこにいるか、どこに誰を配置させるかというスケジュール管理に始まり、術中の情報や記録のみならず術前診察、術後診察、術後の疼痛管理の記録が全て集約され、共有されています。

周術期麻酔管理システムという名の通り、まさに患者さんを中心として、麻酔科医、手術に関わる医療スタッフが患者さんの容体を共有することができますね

麻酔科が行う業務の全てをここで一括管理していますからね。そこには、人の情報であったり、労働の情報も含まれます。いつどのような手術が何件行われていて、この手術はこのような結果になった、という情報も全て引き出せます。特に患者さんのデータベースは、「このような合併症がある患者さんからはこのような結果になった」という「結果」まで抽出できます。患者さん、麻酔科医、手術データと、麻酔科医に必要なデータが集約された総合データベースと言ってもいいでしょう。


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透明性の高い記録が、気づきとモチベーションを与える

麻酔科医の仕事を評価するためのシステムとしても、ORSYSを開発されていると伺いました

予防医学をのぞき、医療とは何かが起こって、それに対して対処するという流れが基本です。ところが、私たち麻酔科医の手術室での仕事は、先を予測して動き、何も起きないようにすることです。真逆の考え方なんですね。だからこそ、なかなか評価されにくい仕事でもあります。そこで、私たち麻酔科医の仕事を細かく記録できるORSYSに、さらには評価までできる機能を付加しようと考えたのです。例えば「10秒トレンド」は患者データを詳細に記録することで、私たちの仕事を助けてくれますが、それだけでなく、麻酔科医としての技術をより正確に記録できるという面では、私たちの仕事ぶりを評価していると言えます。このシステムなしでは得ることができなかった「気づき」によって、麻酔科医としてのモチベーションにも繋 がるのです。

ORSYSは麻酔科医の視点だからこそ生まれたアイデアが凝縮されているのですね。同システムは麻酔科医だけでなくチーム医療全体に恩恵をもたらしているのではないでしょうか

麻酔科医に限らず、リアルタイムで最新データを見られるようになりましたからね。患者さんを中心に、各職種のスタッフがそれぞれの専門分野の視点で、同じデータを共有し、判断・実行していく。特に急性期医療では、患者さんのデータをリアルタイムで共有し続けることが鍵になってくるので、その効果は測り知れません。

ORSYSはまるでサグラダ・ファミリア

システムを開発する上で、考えておくべきことはありますか

基本となることは、機械ならではの特徴を活かしたいということです。人間と機械の役割分担は明確にすべきで、人間がしないといけない役割は絶対にあります。例えば医療の実技。手術中の判断は機械ではできません。一方、機械が得意なのは、情報を正確かつ緻密に反映、共有、管理してくれる機能です。両者の違いは認識すべきですね。


それにしてもORSYSの開発は、まるでサグラダ・ファミリアのようで、気づいたら色々なこと(機能)が追加されているのですが、いつまでも完成しませんね。長年かけて一つずつ積み上げていくしかありません。

人間と機械の住み分けをして、お互いの得意分野でより高め合っていく。人がその専門領域を出ていくのではなく、システムが繋げてくれるのですね

役割分担をきちんとした上でシステムを作っていく方が自然でしょう。得意なところをその人たちに任せて、得意でないところには手を出さない方がいい。チーム医療にしても、各自、自分の持ち分を離れてはいけないと思います。麻酔科医は麻酔科医としての立場から離れずに究めていき、それぞれの力を合わせていけばいいわけですから。チーム医療は、自分たちの専門性を発揮していけば、結果的にいいものができてくるものです。

システムが変えたもの

IT技術が日進月歩で進んでいくことで、医療環境はどう変わっていくのでしょうか

医療自体が変わってくるでしょう。システムが変わると今まで目に見えなかったものが見えてくる。すると効率も良くなり、いい麻酔ができるようになり、患者さんの快適度も上がる。いわゆるシステムが医療を変えるといっても過言ではありません。

ただ、技術開発や研究ばかりが先走るのは好ましくありません。あくまでも現場にいる立場として、日々の臨床で出てきた記録を残して、表現していくということをこれからも続けたいと思います。データを蓄積してその中から抽出し、まとめたデータを次に生かすことが大事なのです。あっと驚かせるものではなく、普段していることが繋がっていくことが本望ですね。

本日はありがとうございました

※ORSYS:株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンの周術期患者情報システムです。



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